月下美人

 夜の8時過ぎに玄関のチャイムが鳴った。扉を少し開けると知らない顔の女性の顔が見えた。急いでいる様子で「隣のNです」とおっしゃる。隣に住んでいながら以前に奥さんの顔を見たことがなかった。扉を開けると、右手に白い花、左手に水の入った小さな容器、両手の間に緑の大きな葉に見えるものがあり、花と容器はつながっていた。「月下美人の4つの花が同時に咲き出したのでひとつお持ちしました。ご覧になってください」という言葉で事情が飲み込めた。
 ひとまずお礼を言って、左手に花を、右手に水の入った容器をもちリビングのテーブルの上にそっと置いてから、玄関のドアを閉めた。花は蕾の状態はすでに過ぎて花が咲きかけていた。

 月下美人という花についてはほとんど知識がなかった。シニア情報アドバイザー講座の事例発表で、第2期生の堀江弘恵さんが「季節の花の写真を添えてはがきを送りましょう」という題で発表されたことがあり、そのときの花が月下美人だったことを思い出した。一夜しか咲かない花を写真に撮り、写真を画像処理して暑中見舞いのはがきに貼る手順を説明してくれた。2001年11月のことである。

 まず写真を撮るためにNikonFとデジカメを準備し、月下美人を知るためにインターネットの力を借りた。ネットの向こうの世界には無限に情報があるのに改めて驚く。数年にわたって月下美人の花を咲かせ、写真を撮り時系列に様子を紹介している人もある。月下美人オタクとでも言おうか。

月下美人について得た知識。
 ・メキシコの熱帯雨林地帯を原産地とするサボテン科クジャクサボテン属の常緑多肉植物
  (学名:Epiphyllum oxypetalum、科名:サボテン科)
・闇夜でも目立ち接近を容易にする芳香と闇夜の薄明かりに浮かび上がって見える白い花
・茎のほとんどは昆布状の扁平な葉状茎になっている
・夜に咲き始め朝に一夜限りで儚く花はしぼむ(開花期:7〜11月)
・辺りに顔を近づけると目に沁みるほどの強さの素晴らしい芳香を漂わせる
 
 被写体としてじっくり見ると、美しく咲きつつある真っ白な花は、デジカメが最も不得意とする対象である。花の白い色と微妙な陰影を出すのはとても難しい。デジカメのいいのは、撮ってすぐに結果を確認できることであり、今回は自宅ではパソコンで拡大しすぐに見ることが出来る利点があった。
 
 目視で花の咲く変化を見ることは出来ないが、いつの間にか花は咲き形は大きくなっている。20時26分から23時17分の間にデジカメで約40枚、NikonFで数枚撮影した。
 華会の写真の現像とプリントでいつもお世話になっている写真屋に、フロッピーとフィルムを持ち込んだ。その足でアドバイザー講座に出かけ、夕方にもどるときプリントをもらった。写真屋の親父は、いつものようにプリントの段階で微妙な補正をしてくれた。心配した純白の花の陰影も思ったより良く出ている。夕方にお隣へ写真を届けた。
 
 隅田川では花火大会が行われている夏の夜を月下美人とともに優雅なひとときを過ごすことがが出来た。朝まで花は咲き続けることもあるとのことで、期待しながら眠り、朝起きて最初に月下美人を見た。
 昨夜はあんなに大きくしっかり咲いていた花はしぼんで、蕾のように見えた。葉状茎から花につながっている茎も力なく、一夜の夢が終わったのを知った。

花−葉状茎−水の容器
20:26
21:20
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23:17

翌日08:27

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