編集後記集
【メルマガIDN 第182号 091101】

唐津と有田2009 【その3】唐津まち歩きで龍に出会う
 
2001年に唐津へ行ったときには、まず、唐津神社へお参りし、からつ曳山展示場で14台の曳山を見た。そのあと、唐津城の三の丸跡に建てられた唐津西ノ門館(出土文化財管理センター)に行き、旧家の大島邸と高取家を門の外より前庭と建物をみた。
 高取家の先を左に曲がって《西の浜海水浴場》の砂浜に出て、子供の頃の夏休みの大きな楽しみだったことなどを懐かしんだ。街なかにもどり、唐津焼きの窯元のお店を6軒ほど見て、さらに窯元が共同で運営している展示場を訪問した。

 今回は、JR唐津駅からアーケード街を抜けて、唐津神社へ。唐津神社では、2001年以来再び唐津へ来ることが出来たことを感謝し、旅の無事を祈り、記念に柘植の辰の彫り物(十二支のひとつ)のお守りを買った。からつ曳山展示場で14台の曳山や《唐津神祭行列図》を見るのに時間を費やした。そのあと、ぶらり《唐津まち歩き》を楽しんだ。


青龍工房の福本 哲夫さん


藤川川蒲鉾本店 曳山の絵柄の15本の銚子


炎群(ほむら)の龍の置物


唐津駅前にある曳山の碑

青龍工房の福本哲夫さん
 からつ曳山展示場からJR唐津駅へは、アーケード街を抜ければ最短距離で戻ることが出来るが、アーケード街の手前を左におれて、一本東側の通りを歩くことにした。
 東側の通りの東南の角に、曳山の絵をあしらった《青龍工房》の看板と、曳山をプリントしたTシャツが店先につるしてあるのが目に付いた。

 お店の中へ入ったら、壁面に曳山の絵が飾ってあり、台には、販売用のTシャツや絵はがきが並んでいる。
 お店の中にある、たくさんの絵、絵はがきやTシャツをひとわたりみせてもらったあと、お店の主人である福本 哲夫さんとの会話が弾んだ。

 福本哲夫さんは、昭和32年(1957)生まれの画家。平成12年(2000)に県展日本画部に入選、平成13年に佐賀県展・デザイン部門入選(以後同じ部門で3回入選)した経歴の持ち主。
 平成13年(2001)に《青龍工房》を設立した。画家のみではなりわいとならないので、絵のほかTシャツや絵はがきを販売しているとのこと。

 福本 哲夫さんが描く曳山の絵には特徴がある。漆の光沢はもちろん、白と黒だけで表現した 金・銀・赤・青の色彩感や髪・髭・布地の素材感等々。観れば観るほど味が出てくる《曳山ん絵》を目指している。

 ペン先で落とした点の集合で描く《点描画》は、下地を黒く塗り、水で薄めた白絵の具をペン先にのせ、明るい色や、光に照らされた部分は密に、また、暗い色や日陰の部分は疎に落として立体感を出す。
 白絵の具だけを筆で描いた《水彩画》では、下地を黒く塗り、筆と白絵の具だけを使い、溶く水の加減だけで立体感を出す。

 平成18年には、全国豊かな海づくり大会(第26回)の記念品として《曳山ん絵はがき》が採用されたという。

 福本 哲夫さんは、飾る場所に合わせて、大きさ・材質(掛け軸・パネル・色紙)等の注文に応じている。

藤川川蒲鉾本店のウインドウの15本の銚子
 青龍工房の前を南に向かって歩き、しばらく歩いたところで右(西)へ曲がってすぐのころに、曳山の絵柄が描かれているお銚子が並べられているウインドウを見つけた。
 ウインドウの上には、木の一枚板に《老舗 ふじ川蒲鉾本店》と太い黒い字で書いてある。後にネットで調べたら、このあたりが中町であり、藤川川蒲鉾本店は創業100年の老舗であることを知った。

 ジャガイモのかわりに、エソやアジなど地ものの魚と味のいいスケソウダラのすり身に、タマネギのみじん切りを加えた魚のすり身を使い、コロッケふうに仕上げた《魚ロッケ》は藤川蒲鉾店のオリジナルとのこと。現在は、カレー風味とあっさり塩味の二種類の味で地元庶民に愛される食べ物となっているそうである。

 このウインドウに15本の銚子を並べているのに、心意気を感じる。明治中期に消失した紺屋町の《黒獅子》の絵柄の銚子が14番目の《七宝丸》の右側に置かれていた。

炎群(ほむら)の龍の置物
 藤川蒲鉾本店の前の道を歩くとすぐに、アーケード通りに出る。アーケードを左に曲がると、呉服町アーケードの入り口にある唐津焼の専門店《からつ焼 炎群(ほむら)》の前に至る。
 《炎群》は唐津焼が伝統工芸として認可された直後から開店し、約20年間営業しているお店で、現在は約31軒の唐津焼窯元の作品を取り扱っているとのこと。朝、通ったときに《炎群》のウインドウで目をつけていた、3つの龍の置物を見て写真に収めた。

唐津駅前の碑にある曳山の銘板
 JR唐津駅の正面に戻ってきた。時刻は5時を回っているが、外はまだ明るい。唐津は東京に比べて暮れるのが約1時間遅い感じである。
 駅の写真をとっている時に、ひろばに曳山の碑があるのを見つけた。碑の台部の壁面には14の曳山の銘版がはめ込まれていた。曳山の碑は唐津の駅前でお客を出迎えているのであるが、夕方になって、帰りに見ることになった。14の銘板はかなり痛みが進んでいるが、どれも風情のあるものである。

エピローグ
 今回は曳山を見るのを目的に唐津へ行った。からつ曳山展示場で14台の曳山や《唐津神祭行列図》をゆっくりと見、まち歩きの途中で、青龍工房の福本哲夫さんに出会い、いくつかの龍に出会うことが出来た。
 唐津における《龍》は、曳山の《飛龍》と《七宝丸》である。福本 哲夫さんに、唐津に龍にゆかりのものがありますか?、と尋ねたら、「さあ・・・」と言う返事だった。
 このメルマガを発行する今夜は、2009年の《唐津くんち》の前夜。明日の11月2日から4日にかけて、、町は祭り一色に染まることだろう。一度は祭りのときに訪れてみたいと思う。

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