編集後記集
【メルマガIDN 第183号 091115】

唐津と有田2009 【その4】 再び《有田ポーセリングパーク》のツヴィンガー宮殿を訪れた
 1993年12月に帰省したときに、《有田ポーセリングパーク》のツヴィンガー宮殿で、《陶磁の東西交流展》を見た。このツヴィンガー宮殿は、ドレスデンのツヴィンガー宮殿を模して、ほぼ同じ規模で再現されている。
 2008年6月に、ドレスデンにある(本場の)ツヴィンガー宮殿へ行き、《ドレスデン陶磁美術館》でたくさんの伊万里やマイセンを見る機会に恵まれた。
 今回帰省したときに再び《有田ポーセリングパーク》のツヴィンガー宮殿へ行って、細かいところでは違いがあるが、有田の宮殿は忠実に再現されていることがわかった。

1993年12月の《陶磁の東西交流展》
 1993年の展覧会では、有田・デルフト・中国の相互影響を主なテーマとし、オランダハーグ美術館収蔵品を中心に68作品が展示されていた。
 17世紀の中ごろに中国の景徳鎮窯が磁器生産を中断することになった時、オランダ連合東インド会社(VOC)は有田で作られた磁器をヨーロッパの王侯貴族に届けるために買い付けた。おかげで膨大な量の伊万里がヨーロッパに存在している。
  《陶磁の東西交流展》では、伊万里港から積み出されてヨーロッパで珍重された磁器が里帰りして展示されていた。有田・デルフト・中国の三様の陶磁文化の交流を見ることが出来た。また、古い時代の大型で美しく彩色された磁器の迫力に驚かされた。

ドレスデンのツヴィンガー宮殿
 ドレスデン市は、エルベ河畔に位置するザクセン候国の古都で、多くの歴史的建物を有し、《エルベのフィレンツェ》と称される美しい街。
 ドレスデンにあるツヴィンガー宮殿は、ポーランド王でもあった選帝候のアウグスト強王の黄金時代に、建築家ペッペルマンと彫刻家ペルモーザが18年の歳月をかけて1728年に完成。18世紀のザクセン・バロック建築の最高傑作といわれている。1945年に第二次世界大戦で壊滅状態になり、1988-1992年にかけて修復された。


ドレスデンのツヴィンガー宮殿 中庭より 2008年撮影 

同左 王冠

ツヴィンガー宮殿にある 《ドレスデン陶磁美術館》
 ツヴィンガー宮殿にある《ドレスデン陶磁美術館》は、1710年から1730年にかけておこなわれたアウグスト強王の膨大なコレクションを展示する博物館になっている。
 17世紀および18世紀の中国・日本の磁器と18世紀のヨーロッパの磁器(マイセン磁器)を2万個以上所蔵している。その半分が東アジアで作られたものであり、入り口に近いゾーン《The big wall arrangement》に青の染付け、赤絵、金襴手などの《伊万里》が整然と展示されている。
 アウグスト強王は、磁器の収集と平行して、東洋の磁器の製法を研究し習得させ、1710年頃に白磁の製造、1717年には染付け磁器の焼成に成功した。その後、日本の柿右衛門や中国の絵付けの技法をマイセンに取り入れた磁器が大量に生産されるようになった。《ドレスデン陶磁美術館》にはこのようにして生産されたマイセンの磁器も大量に展示されている。
【詳細は海を渡った伊万里(ドレスデン)をご覧ください】

《有田ポーセリングパーク》のツヴィンガー宮殿
 有田の郊外に《有田ポーセリングパーク》というテーマパークが1993年に作られた。このパークの目玉のひとつとして、ツヴィンガー宮殿が、王冠門部分を中心に再現された。この建物は現地のツヴィンガー宮殿とほぼ同じ規模で再現されており、王冠門の高さは28m、王冠門をはさんでウイング部分の長さは116m、となっている。
<展示について>
 今回(2009年)に訪れたときには、正面より向かって右側のウイングのみが展示に使われていた。ウイングの入り口に近いほうより、《江戸の有田焼(1)~初期伊万里・初期色絵》、《江戸の有田焼(2)~3つの様式》、《幕末から明治時代の有田焼》の順に会場が構成されていた。
 展示会場の一番奥には、300年前にヨーロッパで流行していたインテリアの雰囲気を再現したコーナーもあった。1870年代にウィーン万博に展示された《染付金高蒔絵御所車図大花瓶(高さ182cm)》や、アルゼンチンから里帰りした《色絵龍紋大壷(高さ160cm)》も展示されていた。
 展示会場の中ほどのテーブルの上には、1993年に開催された《陶磁の東西交流展》の図集も置いてあり、ほとんど記憶に残っていなかった展示内容を思い起こすことが出来た。
 有田町とマイセン市は、古くからのやきものを通じた東西交流が実を結び、1979年に姉妹都市を締結している。


有田ポーセリングパークのツヴィンガー宮殿 中庭より 2009年撮影

チェンバロ演奏会

 今回の収穫のひとつは、有田のツヴィンガー宮殿の左ウイング一番奥のサロン(上の写真では右)で開催された、渡辺敏晴氏のチェンバロ演奏会を聴くことが出来たことである。《有田ポーセリングパーク》内で小さな看板を見つけて聴きに行った。
 渡辺敏晴氏は、チェンバロ、ガンバ、胡弓の奏者。毎年夏に群馬県で《アーリーミュージックの夏 in 群馬》を開催している。当日は胡弓を弾きながらの解説もあったが、メインのメニューは、ヘンデル、そのほかイギリスやヴェルサイユ宮殿にまつわる曲が中心だった。
 氏は当日のブログに、ドイツのバロック様式のお城でコンサート演奏をしたこと、大勢のお客さまが聴いてくれたこと、そして意外な出会い、貴重な出会いがいくつかあったこと、お世話になった方のこと、有田の歴史を強く感じることのできた二日間だったと記し、最後に、有田でバロック音楽をとおして、また来年もぜひお会いできる事を願っている、と書いている。


サロンのある西ウイングの建物

サロンにおけるチェンバロ演奏会風景

  2008年に本場ドレスデンの、2009年に有田にあるツヴィンガー宮殿を訪れることができた。テーマパーク《有田ポーセリングパーク》の目玉のひとつとして、ツヴィンガー宮殿の一部が忠実に再現されていることに、改めて驚いた。
 両方の宮殿では、磁器の展示がしてあるが、有田では東のウイングだけであり、展示スペースの面積、展示品の数と質において比較にならないほどドレスデンのほうが充実している。
 しかし、有田に行けば、《九州陶磁文化館》で有田焼、特に伊万里をふんだんに見ることが出来る。このお話は次号で。

ツヴィンガー宮殿にかかわる写真はこちらよりご覧下さい
編集後記集として、時系列とカテゴリー区分に整理しました

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