編集後記集
【メルマガIDN 第189号 100215】

■ICTの進化により我々の生活はどのように変わるか
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鉄人28号からドラえもんへ~

 《鉄人28号からドラえもんへ》という言葉は、朝日新聞2009年12月26日の《ナント力学》より拝借したものである。情報通信技術(ICT)の進化により我々の生活はどのように変わるかを象徴的に言い表している。共通点はどちらもロボット。しかしこの両者には大きな違いがあり、パラダイムの変化を表している。
 鉄人28号は、リモコンで指示したとおりに動き活躍する。一方のドラえもんは、のび太くんが置かれている状況や気持ちまでも汲み取って、のび太くんを助けてくれる。
 2010年はまさに《鉄人28号型》から《ドラえもん型》へ変わろうとする変換の時期にあることを以下に述べてみたい。

ICTの進化の歴史を概観する

ICTのパラダイムの変化

 今まさに変換点にあることを知るためにも、ICTの進化の歴史を概観してみる。
 図に示す《ICTのパラダイムの変化》は、私が2006年1月に『住まいと電化』に投稿したときに作成したものである。1990年から5年毎に区切り、ひとつの時代として示している。

 1995年頃に、それまで《ニューメディア》と言った時代が《マルチメディア》の時代へ大きく変わる。インターネットの民間利用が始まり、メールの利用が企業に導入された。BSとCS放送が始まり、ネットワークとしては、64KのISDNは早いと喜んだ。

 2000年頃より《ブロードバンド》の時代になる。ネットワークとしてADSLが登場し、通信速度が高まる。携帯電話が普及し、この時期にIP電話(VOIP)や無線LANの利用が現実のものとなる、地上デジタル放送が各家庭で見られるようになったのもこの頃のこと。

 2005年からの5年間は《ユビキタスの時代》。《ユビキタス》とは、様々な活動シーンにおいて、時間や場所の制約を超えて、必要とする情報を誰もが意識しないで簡単に安心して活用できる、と定義されている。通信回線としてはFTTH(光)やCATVのブロードバンドの利用が本格化し、携帯電話が生活インフラとして定着する。e-Japanが国策となり、u-Japanは総務省より国のICT化の政策として提唱された。
 そして、2010年には新しい時代を迎えようとしている。

《コンテクスト・アウエアネス》という時代
 平成16年度(2004)に住宅情報化推進協議会(ALICE)で、《u-house研究会》を設置して、その研究会の主査をまかされた。会員の協力により、韓国やスウェーデンの現地調査などの成果も盛り込んで、2005年の春に2010年頃の生活を予測する報告書をまとめた。
 提案したコンセプトとは、「2010(ツー・オー・テン)の住宅は、安心をベースに多彩な生活を演出する《彩る 》でありたい。そして《彩る家》を支えるのは《電気執事》であり、《電気執事》が、コンテクスト(生活者のおかれた環境や状況)をアウエア(把握)し、生活者が要求する最適な情報やサービスをきめ細かく提供してくれる、というもの。

《アンビエント》というコンセプト
 《コンテクスト・アウエアネス》を提唱してから5年経って、2010年に《アンビエント》というコンセプトにお目にかかった。大阪大学の村田正幸教授は、「機器の側が人やその周囲の状況を察知して、サービスなどの働きかけをする。アンビエントとは、そんな考え方です」と説明している。《アンビエント》という言葉は数年前から使われていたそうであり、英語の「周辺の」とか「環境の」といった意味。
 村田正幸教授の言う《機器》のことをわれわれは《電気執事》とシャレたつもりであり、村田教授の《アンビエント》と我々が提唱した《コンテクスト・アウエアネス》はほとんど同じ概念である。
 朝日新聞の《ナント力学》の記事を書いた、平 和博氏は《アンビエント》というコンセプトを《ドラえもん》になぞらえた。《鉄人28号からドラえもんへ》という言葉は、我々が居る2010年のICTにかかわるパラダイムの変化を分かりやすく表現していると思う。

生活の変化のイメージ
 《コンテクスト・アウエアネス》や《アンビエント》と難しいことを書いてきたが、これは具体的にどのような生活をイメージしているのであろうか。いくつか例をあげて見る。

 ネットにアクセスしたら、自分が興味のある製品や事柄の広告が同時に表示された。(現在もサービスされているが、より適合率の高い広告が表示されるようになる)

 見たいと思っていたTVの番組を、指示しないのに録画してくれていた。(これはすでに対応している機器がある)

 中村橋の改札口で携帯をかざして出たら、携帯のディスプレイに目指している練馬区立美術館への案内図が表示された。(事前に練馬区立美術館の展示会の案内や道順を調べていたのを携帯が記憶してくれていた)

 2階で小型のテレビを映しながら仕事をしていたら、オリンピックの好きな種目が始まったので、1階のリビングへ降りていったら、大型テレビに同じチャンネルの映像が自動的に映し出された。(人の存在をセンサーでキャッチする技術とメディア間ハンドオーバー技術を使うもので、このシステムのデモを見たことがある)

 ドライブの帰りに自宅へ15kmのところまで戻ってきたら、自動的に自宅の空調がONされた。(GPS利用とカーナビの進化。空調機への指示には携帯の電話回線と宅内のネットワークを使う)

電気執事

自宅へ15kmのところで自宅の空調がONされる
電気執事が、コンテクスト(生活者のおかれた環境や状況)をアウエア(把握)し、
生活者が要求する最適な情報やサービスをきめ細かく提供してくれる
エピローグ
 ここに示したように、《電気執事》が、コンテクスト(生活者のおかれた環境や状況)をアウエア(把握)し、生活者の要求する最適な情報やサービスをきめ細かく提供してくれる状況になったときに、人はどのように感じるであろうか。このような《気配り》をありがたく受け入れるか、《おせっかい》と感じるか、サービスの内容にもよるが、個人差があると思う。皆さんはいかがだろうか。

 最近、《クラウド・コンピューティング》が注目されているが、《 コンテクスト・アウエアネス 》や《アンビエント》が目指していることに大きくかかわるところがある。2月28日のIDNの10周年記念総会のあとに予定されている、ふれあい充電講演会で、斉藤講師の講演を聞いて、これからの生活の変化と可能性を身近に感じてほしい。

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