復興支援のために大船渡へ行ってきた

【メルマガIDN編集後記 第223号 110801】

 2011年7月13日と14日に、東日本大震災の被災地である大船渡へ行ってきた。仮設住宅におけるネット環境の状況の確認と、仮設住宅の居住者や震災で被災し、やむなく居住地を離れておられる方々の(インターネットによる)情報に対するニーズを知ることを目的とした。
 全国に存在する100を超すシニアネット、と3千数百名のアドバイザーが復興に向けて支援活動の輪を広げようと、《シニアネット東日本大震災復興支援委員会》の準備委員会が、ニューメディア開発協会に設置された。長期的に見た復興段階も視野に入れて、何が求められているか、シニアネットとアドバイザーは知識とスキルを特徴として何ができるかを考え、実行しようと準備を進めている。

 今回は、現地で支援活動をしたいとの意向を持っておられる《シニアネット・リアス大船渡》とニューメディア開発協会がコンタクトし、復興段階に入った現地での具体的な支援策を模索した。

大船渡の被災状況 工場団地だったところ



被災した大船渡線  大船渡中心部


山村広場に建てられた仮設住宅(84戸)

モバイルWi-Fiルーター


仮設住宅の集会室での懇談


シニアネット・リアス大船渡の事務所での勉強会
eネット・リアス釜石、シニアネット・リアス高田よりも参加


大船渡
 大船渡市は、日本の岩手県南部の太平洋沿岸地域に所在する人口4万人ほどの市。陸中海岸国立公園のほぼ中央部に位置し、典型的なリアス式海岸を持つ地域である。沖合いには、日本の水産庁が定義する《世界三大漁場》の一つである、北西太平洋海域(三陸漁場)が広がる。岩手県で最大で重要港湾である大船渡港が立地している。

大船渡市の被害
 2011年(平成23年)3月11日、東日本大震災で被災し、特に大津波によって甚大な被害を受けた。
 三陸沖を震源地とするマグニチュード9.0(震源の深さ:約10Km)、震度6弱の地震に見舞われた。津波の高さが、大船渡市で23.6メートルに達していた。1933年の昭和三陸地震津波で観測された大船渡市の最大28.7メートルにほぼ匹敵している。
 人的被害は、死亡者325人、行方不明者127人(平成23年7月1日現在) 、建物被害は、全壊又は半壊が3,629戸に及んでいる。

大船渡へ
 7時56分東京発の《はやて213号》で北に向かい、10時25分に一関に到着。大船渡線が被災しており、列車の便では途中までしか到達できないので、11時20分発のバスで出発し、2時間余りで大船渡に到着。
 大船渡の中心部から車で、目的とする仮設住宅のある三陸町へ。痛ましい状態になっている三陸町中央公民館の被災状況を見る。建物の前の広場は、被災した車の集積場になっており、開けている海の方には、無残な姿の小学校を見る。この小学校では、全員が無事に避難し、人の被害はなかったことが幸いだったとのこと。

三陸町の山村広場に建てられた仮設住宅
 大船渡の中心部にも数箇所の仮設住宅が建設されており、現在工事中で、7月下旬に完成予定のものもある。今回は、《シニアネット・リアス大船渡》の会員の方も住まわれている、三陸町の山村広場に建てられている仮設住宅(全84戸)を訪れた。

 仮設住宅の手前には、駐車場の用途にもなっている広場があり、奥に向かって大通りが伸びている。この大通りから直角に小通りがあり、各戸の玄関はこの小通りに面している。電話はまだひかれていないそうであるが、住棟ごとに衛星アンテナが設置されて、各戸に分配されているようだ。

仮設住宅でのネット環境
 三陸町の山村広場は、NTTドコモの2011年6月末時点のサービスエリアとしては《FOMA プラスエリア》に位置しており、通信環境としてはカバーされていることを事前に調べていた。

 ニューメディア開発協会が、NTTドコモの《モバイルWi-FiルーターHW-01C》を購入し、《mopera》によるプロバイダー契約をして、準備を整えた。出発前の週に、四谷ひろばのパソコン教室で、NTTドコモのWi-Fiルーターとパソコンを接続し、インターネットへの接続のテストをしたが、成功しなかった。実験した部屋に設置してあるWi-Fi環境では問題なく接続できているのに、ドコモのルーターでは接続できず、原因も解明できなかった。

 多少の心配を抱えながら現地に行った。仮設住宅の集会室で、貸与されたパソコンを梱包用の箱から出して、パソコンの初期設定をすませ、《モバイルWi-Fiルーター HW-01C》を接続し、マニュアルにある手順を踏んだら、難なくインターネットに接続することができた。

仮設住宅の集会室での懇談
 仮設住宅の冷房のない集会室に二十数名の方が集まってもらった。ニューメディア開発協会が事前に作成していた(仮)ポータルサイトにアクセスして、内容をお見せした。トップページには、行政情報、生活情報、雇用情報、新聞、情報発信などのボタンを配置してあり、ボタンをクリックすると、すでに公開されている情報に簡単にアクセスできるように、リンク先を整理して示してある。
 このサイトを見てもらいながら、被災地においてどのような情報がほしいかについて意見を伺った。

シニアネット・リアス大船渡の事務所での勉強会
 7月14日の午前中には、リアス3兄弟とも言われている、eネット・リアス釜石、シニアネット・リアス高田の方々もお見えになって勉強会を行った。

 シニアネット・リアス大船渡を含めた3つの団体は共同で、シニア情報生活アドバイザー養成講座を実施する準備を進めており、実現の直前に震災にあって、やむなく中止したとのこと。

 最初に、貸与されたノートパソコン10台ほどの包装を開けて、パソコンに名称(NO)をふり、パスワードを定め、初期設定を行った。ここでは、無線ルーターを利用してインターネットに接続した。
 勉強会の内容は、前日の三陸町の山村広場の集会場での内容と同じく、ニューメディア開発協会が作成したサイトを、皆さんがアクセスしながら見てもらった。

強く感じたこと
・被災者の方は、今回見せてもらった震災に関する情報をもっと早く見たかったが、実現できていない。震災直後は情報そのものが整備されてなく、アップ出来なかったこと、避難所等にインターネット環境がなかった、という2つの原因が考えられる

・被災者の方は、情報を見るだけでなく、発信できる環境がほしい。たとえば、元気を示す団扇を作りたいが、その材料を提供してくれる人を求めたい。震災前後の同じ場所の写真を持っているので見てもらいたい。

・被災者の方は、津波で流された代わりのパソコンを貸与してもらえそうであるが、今回デモをしたネット環境がほしい。しかし、月当たりの通信費(6,000円弱)は負担である。
 モバイルWi-Fiルーターを個人に提供してもらえればありがたい。せめて、集会室に設えてもらうことができれば、インターネットを見る会などを企画することにより、仮設住宅に住んでいる人たちのコミュニティ形成にも役だてることができる。通信環境を提供してもらえるような支援を期待する。

エピローグ
 今後の展開について、大船渡では、仮設住宅の居住者にパソコンを貸与し、モバイルWi-Fiルーターを持って仮設住宅を巡回し、集会室でインターネットを見る会などを開催してみたいとの考えを披露された。
 釜石の理事長は、大船渡の例も参考にしながらすぐにでも活動を開始したい、ということだった。(陸前)高田の理事長は、あまりにも被害が甚大で、会の体制を整えることから始め、時間をかけて次のステップに進みたいと言われた。

 13日の夕方に、シニアネット・リアス大船渡の及川代表に、仮設住宅のあった三陸町から大船渡を通り、陸前高田の被災地を車で案内してもらった。有名になった陸前高田の一本松も遠くから見た。
 14日の早朝には、大船渡の被災地を歩いた。三陸町も、大船渡も、陸前高田も津波の爪痕は生々しく残っているが、被災地の整備は着々と進んでいるように見えた。また、7月末のテレビでは、一本松にも、枯れつつあった茶色の松葉の中に青い芽が出てきた映像が映されていた。