佐原の大祭 秋祭り
【メルマガIDN編集後記 第278号 131115】

佐原の大祭 秋祭り
 佐原には山車が24台あり、佐原の大祭では、夏祭りに10台、秋祭りに14台が引き回される。2009年の秋に、山車に装飾された龍の彫刻や織物を見るために《佐原の大祭 秋祭り》に行ったことがある。この年に行ったのは、金曜日だったこともあり、14台の山車が何処にあり、何処で曳き廻わされるのか場所を探すのに苦労した。
 
2013年は3年に一度の《年番引継行事》が行われる年に当たり、下宿通りから上宿通りに14台の山車が整列すると知って4年ぶりに見に行った。

下宿通りから上宿通りに14台の山車が整列
 先頭はは源 義経


山車が小野川沿いを巡行する/水路を遊覧するシャトル舟も見える


迫力ある龍の彫刻(西関戸区の山車)


男たちの風情 いなせな男たちの笑顔が素敵です


女たちの風情 この子が健やかに育ちますように


子供たちの風情
 イエイ!イエイ!イエイ!

祭り
 佐原の大祭夏祭りと秋祭りは、関東三大山車祭りの一つと称され、約300年の伝統を有し、国指定の重要無形民俗文化財に指定されている。佐原囃子の音を町中に響かせながら、家々の軒先をかすめながら進むさまは風情があり、小江戸の風物詩を醸し出している。
 八坂神社祇園祭である7月の夏祭りは、小野川をはさんで東側一帯(本宿地区)を10台の山車が曳き廻される。諏訪神社秋祭りである10月の秋祭りは、小野川の西側一帯(新宿地区)を14台の山車が曳き廻される。

山車
 佐原の山車は、江戸型山車の形態とは異なり、独自に発展を遂げた4輪2層構造の曳山の形態で、2本の車軸の上に土台を乗せ、土台に立てられた6本または8本の柱によって2層を支えている。
 1層目の柱間には敷居や鴨居などを設け、正面を御簾または玉簾で塞ぎ、側面には障子を嵌め込む。1層目の床をはった周囲には擬宝珠高欄様の手摺りが取り付けられ、ここには下座連と呼ぶ囃子方が乗り込む。
 2層目は露天となっており、周囲に跳高欄を廻している。本体の中央には、《迫り出し》あるいは《人形柱》などと呼ぶ真柱を立てて、その先端に《飾り物》と呼ぶ巨大な人形や作り物を取り付けている。
 使用される材料は主にケヤキ材を用い、その他にヒノキ材やカシ材などを用いて造られている。大きさは、高さ約4.0m、間口約3.2m、奥行約3.8mほどである。

人形

 跳高欄を廻した山車の2層目には、日本神話などの説話に登場する歴史上の人物の大人形や作り物が飾り付けられている。大人形は、身の丈4~5mにおよび日本最大級の大きさである。
 この大人形は、江戸時代から明治・大正時代にかけて名人と呼ばれた人形師達によって技術の粋を集め制作されたもの。
 また、作り物には、麦藁細工の鯉や稲藁細工の鷹等、町内に住む人達の手によって制作された昔ながらの飾り物もある。

装飾
 山車本体は比較的簡素な造りであり、周囲に装飾された彫刻が山車を重厚にみせている。彫刻は、《関東彫り》と呼ばれ、ケヤキ材の木地を生かし、重厚かつ繊細に彫られており、後藤茂右衛門、石川三之助、小松光重、金子光晴など、名工と呼ばれた彫工の作品が数多く残されている。
 彫刻の構図は、龍、獅子、花鳥のほか、日本神話などの伝記物、太平記、太閤記などの軍記物、三国志、水滸伝などの中国の故事から取材されており、昔話の名場面が、繊細に表情豊かに表現されている。

曳き廻しと曲曳き
 佐原では、山車を動かすことを《曳き廻し》と言う。この山車の曳き廻しは、長さ約4m、重さ20kgほどある《てこ》と呼ばれる2本の長い丸太を山車と山車の車輪の間に差し込み、回転させたり停止させたりして速度をコントロールする。てこ棒を操るには修練が必要で、てこ取り10年といわれる。

<曲曳き>
 基本型の曲曳きとして《のの字廻し》、《そろばん曳き》、《小判廻し》の3つがあり、いずれも曳き綱は使用されずに行われる。

・のの字廻し:山車に向かって左前の車輪を軸として、筆で《の》の字を書くように後輪を担ぎ上げるようにして数回転させるもの

・そろばん曳き:山車の前進の時には、急テンポのお囃子にあわせて駆け足で進み、所定の位置で急停止させ、息も入れずにスローテンポなお囃子にのせゆっくり後退させ、これを数往復繰り返す

・小判廻し:楕円形を描き、ゆっくりと山車を曳き廻すもので、一見地味に見るが、佐原の狭い道ではかなりのテクニックを要する

佐原囃子
 佐原囃子は日本三大囃子の一つで、リズム中心の他、情緒的なメロディーを主体とする独特の祭り囃子。
 佐原囃子を演奏する囃子方は歌舞伎等と同じように《下座》と呼ばれ15人前後で構成される。佐原囃子は現在50曲以上の曲目があり、段物(佐原囃子の神髄とされ最も洗練された格調高い音曲)、役物(儀式的な意味合いを持つ音曲)、端物(地方の囃子を佐原囃子調にアレンジしたもの)の3つに分類される。

エピローグ

 今回は、山車の龍の装飾を写真に撮影することを主な目的にして祭りに行った。そして、14台の山車のうち7台に龍が居ることを確認した。
 新橋本の《道風》については、2009年の秋に撮影した写真には山車の前面に龍の彫刻を見ることが出来るが、今年は、竹取物語のシーンに変わっていた。
 香取市商工観光課に紹介してもらって、新橋本の区長さんと電話で話をすることが出来た。龍の彫刻を彫った岡野 繁棟梁が亡くなったこともあり、山車の装飾を全面的にやり替え,
2012年の秋より、北澤一京棟梁の手になる竹取物語をモチーフにしたシーンの彫刻に変更したこと、山車の前面にあった龍の彫刻は後ろの方立と蕨手に移動したと教えてくださった。
 また、山車に取り付けられる装飾品は、火災などでの損傷を避けるために、分散して保管することになっており、龍は区長さんが預かっており、訪問すればいつでも見せてあげる、とも言われた。

 
2009年と2013年の秋に撮影した龍については、私のホームページ《龍の謂れとかたち》で紹介する予定であるが、まだ手がついていない。

 祭りの風情を撮影した写真をデジブックにまとめた。デジブックでは、山車巡行の様子、祭りを楽しんでいる男たち、女たち、子供たちの風情を紹介しているので、下記よりご覧いただきたい。


佐原の大祭秋祭りのデジブック
編集後記集