編集後記集

■ドイツ人気質 【NO92 060201】
 
昨年(05年)の12月の海外旅行体験話クラブで「昼は仕事を、夜はコンサート三昧」という題で話をさせてもらった。海外でコンサートに行ったことを中心に幾つかのエピソードを話したが、時間がなくて省略したことのひとつを紹介してみたい。
 1989年の視察では6カ国9都市を訪問、訪問先の企業や団体も15を数えた。14泊のうち5回もコンサートへ出かけ、エピソードも多かった。

 ベルギーのブラッセルを朝バスで出発し、オランダのアイントフォーヘンにあるフィリイプス社を訪問、翌日にデュッセルドルフを訪問する行程のなかでアーヘンが宿泊地になった。アーヘンはオランダとベルギー)との国境沿いにある25万人の都市で、デュッセルドルフへ車で1時間弱のところにある。ホテルは古式ゆかしい風格のあるシュタイゲンバーガーホテル。
 
アーヘンではその夜コンサートやオペラは催されていないようだったので皆と食事に出かけることにした。アーヘンはドイツで最初の都市であるため両替する必要があった。両替の窓口で3日の間の滞在を想定して両替を済まし、食事とワインを楽しみ、代金を払い、ホテルに戻って領収書などの整理をしているときに、両替でもらった額が不足しているように思えてきた。再度計算して、換金額が不足していることを確信した。

 寝る準備の服装を着替えて窓口に行き、片言の英語で事情を説明した。怖い感じの中年の女性は、私の言っていることを理解してくれたが、「確認できないので、窓口を閉め当日の計算がすべて終了する23時に再度来るように」との返事。
 23時に窓口に行ったら、「まだ計算が出来ていない」と。寝たいのを我慢して指示された30分後に窓口に行ったら、両替の窓口は閉まっていた。フロントで聞いたら「彼女はもう帰ってしまった」とつれない返事。不足の額は大金ではないので、「まあいいか」と割り切って寝ることにしたが、すっきりしない夜になってしまった。
 
 あくる日は早朝に出発することになっており、早起きして、朝食を済ませて、フロントでチェックアウトをした。チェックアウトを済まし出発の集合場所へ行こうとしたら、ちょっと待ってと言って、封筒を渡してくれた。封筒の中には前夜に両替の不足金が正確に入っていた。(写真)

 とたんに気持ちのいい朝になり、訪問地のデュッセルドルフへ向けて出発。午前中の日系企業の方々とのミーティングと昼食会を気持ち良く過ごすことが出来た。

 話は変わって、1992年のローマでの体験
 日本の建築研究所はイタリアの同類の機関と共同研究を行っており、会議の場所がカプリ島にも惹かれて会議に出席した。一連の行事の合間に、聖チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の「ロミオとジュリエット(プロコフィエフ作曲)」を聴きに行った。会場はAUDITORIO DIVIA DELLA CONCILIAZIONE。この時は、会議に参加した一人の研究員のAさんが電話で予約してくれた。窓口でAさんの名前を言えばチケットをくれるとのこと。
 開場の少し前に窓口に行ってAさんの名前を言っても、「予約の件は知らない」という返事が返ってきた。がっかりしていたら、「チケットはまだ残っていますよ。」とにっこり。結果的に「ロミオとジュリエット」の全曲を楽しむことが出来た。

 ミラノとローマでの予定を無事に終了し、ローマからナポリ経由でカプリ島での会議に向かった。カプリ島で2泊した後ローマに戻って宿泊するためにI先生と2室を2泊予約し荷物も一部残して出発した。
 あいにくローマからナポリ行きの航空便は欠航。またの機会に(来ることはほとんどない)乗ることの出来る航空券をもらって列車でナポリに移動し、船でカプリ島へ行った。
 ゆったりとした雰囲気の中での会議を終えてローマのホテルに戻った。フロントの男性は、2日目の夜は1室しか確保できていないと言う。I先生とフィレンチェへ日帰りし、I先生推奨の旅行社も教えないというレストランで食事をし、二人でワインをたくさん飲んでホテルに戻った。朝出るときには何とかしますと言っていたのに、狭いツインの部屋に二人寝ることになってしまった。二人とも飲みすぎて心配だったので、モーニングコールを頼んだ。
 しかし、かの男性は起こしてくれない。時間に遅れ気味に起きてあわてて降りていったらフロントに誰もいない。チェックアウトしないで出かけようかと相談していたら、昨夜の彼が目をこすりながら身支度をしながら起きてきた。

 これは、おおらかなイタリアでの体験であるが、ドイツとイタリア人気質のちがいの一面をあらわしているのではなかろうか。

 先日WEBの掲示板を見ていたら、ドイツやドイツ人とかかわりのあった人たちがドイツ人の金銭感覚についていろんな発言をしていた。
 納得すれば高額でもきちんと支払いチップまであげるが、納得いかない料金を金額の多少に関わらず払わない、疑問を持った時は納得がいくまでただす、節約が生活の一部になっている、質実剛健、などたくさんの発言がにぎやか。

 掲示板の内容がドイツ人気質を示しているとすれば、アーヘンのホテルで両替に疑問をもって3回も窓口に行った私と、その日の会計をしめて間違いがわかったら律儀にお客にお金を返却した彼女、私もアーヘンでの夜はドイツ人気質を全うしたことになるのかもしれない。

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