龍の謂れとかたち


謂れかたち
狩野山楽筆 龍虎図屏風 デジタルアーカイブ《綴プロジェクト》

2011年2月24日に日本橋(東京都中央区)にある東海東京証券の1階ギャラリースペースで
《京都・美の継承〜文化財デジタルアーカイブ展》が開催された
2011年2月9日から2月25日
《綴(つづり)プロジェクト》により制作された高精細複製品が展示され
私にとって興味のある《狩野山楽筆 龍虎図屏風 妙心寺所蔵》を見ることができた


《京都・美の継承〜文化財デジタルアーカイブ展》会場

《綴(つづり)プロジェクト》
 日本古来の貴重な文化財のなかには、海外に渡った作品や劣化防止が求められるものがある
作品は限られた期間しか私たちが目にすることができない
 《綴(つづり)プロジェクト》は
キヤノンの最新のデジタル技術と京都の伝統工芸の技を融合させ
オリジナルの文化財に限りなく近い高精細複製品を制作することを通して
多くの人に貴重な文化財の価値を身近に感じてもらおうとするものである

 2007年3月
京都文化協会とキヤノンは《綴(つづり)プロジェクト(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)》を立ち上げ
2007年3月より2011年の3月までの第一期から第四期の間に、合計21作品の高精細複製品を制作
全国の所蔵者および海外に渡る前に所有していた寺社および地方自治体に寄贈してきた
 今後も、本プロジェクトを社会貢献活動と位置付けて継続し
高精細複製品を広く一般に公開し日本文化の再認識を図るとともに
教育的な観点からも高精細複製品を有効に活用していくそうである

重要文化財《龍虎図屏風》
 江戸時代の17世紀に狩野山楽により描かれたもの
オリジナルは妙心寺に所蔵されている
屏風の員数は六曲一双、サイズは縦179.5cm×376.5cm。材質は紙本金地着色
 強風になびく熊笹の姿が天から舞い降りる龍の勢いを示している
振り向きざま咆哮する虎の姿は、迫力を感じさせる
猛獣の持つ強い生命力を現す絵画としては、狩野永徳の国宝《唐獅子図屏風》と並び称される


狩野山楽筆 重要文化財《龍虎図屏風》


龍図の屏風


龍の頭部の詳細

工程
 
(1)入力:高精細デジタルデータの取得
原寸大の出力が可能なデジタルデータの取得に
デジタル一眼レフカメラ「EOS-1Ds MarkIII」と、微細な動きまで制御できる旋回台を使用
多分割撮影を行い、撮影したデータをパソコンで合成する
画像処理時における劣化は最小限に抑えられ
またレンズ収差による「ひずみ・ゆがみ」などの補正も施される

(2)色合わせ:高精度なカラーマッチングシステム
取得された高精細デジタルデータに
社寺や博物館など、撮影場所によって異なる固有の照明環境に応じた画像処理を施し
忠実な色を再現する。

(3)出力:世界最高レベルのプリンティング技術
12色の顔料インクシステムを採用した大判プリンター「imagePROGRAF」により
画像処理を行ったあとのデータを忠実に出力
水墨画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感、経年変化による文化財の微妙な風合い、質感を実物と遜色なく再現する
使用する「和紙」は、文化財の出力及び金箔加工などに最適化するため、独自に研究・開発されたものを使う
絹本への出力も、独自開発した絹本を使用することで実現した

(4)金箔:古来より伝承される《箔》伝統工芸技により再現
日本の文化財の最大の特徴である金箔・金泥や雲母(きら)のは現在のプリンティング技術では再現が難しい
この再現には、京都西陣の伝統工芸士裕人礫翔(ひろひとらくしょう)が熟練の手技を振るう
箔の経年変化の再現には、「古色」の技法が用いられ、風合いを重視して表現、作品の持つ“年代”を再現している

(5)表装:京で鍛えられた確かな技術
京都の表具師横山央一により表装がなされる
屏風の金具や古色、裏面の切地、襖であれば建物へのしつらえ
絵巻物の表紙にあたる見返し部分まで、オリジナルに近い姿で忠実に再現される

俵屋宗達筆の国宝《風神雷神図屏風》
狩野内膳筆の重要文化財《南蛮屏風》
や尾形光琳の《八橋図屏風》
俵屋宗達筆の国宝《風神雷神図屏風》等が展示されていた

建仁寺が所蔵する国宝《風神雷神図屏風》は
現在は京都国立博物館に寄託されており、展示される機会が少ない貴重な作品
今回展示されたのは、キヤノンおよび京都文化協会が
《風神雷神図屏風》の高精細複製品を、上海万博のために制作し出展されたものとのこと


俵屋宗達筆の国宝《風神雷神図屏風》

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