謂れかたち
村林由貴の龍と鳳凰(妙心寺・退蔵院)

妙心寺・退蔵院
 
退蔵院は、京都洛西に位置する日本屈指の禅寺・大本山妙心寺の塔頭(たっちゅう)
室町中期の応永11年(1404)に千本通松原に建立され
15世紀には妙心寺山内へ移り、応仁の乱後に現在地に移転している


妙心寺の正面 退蔵院は門を入ってすぐの左側にある
【撮影:2007年7月】


退蔵院方丈襖絵プロジェクト
 《京都・妙心寺退蔵院 村林由貴 襖絵展~美の創造とそれを支える職人たち~》が
東海東京証券(東京・日本橋)の1階ギャラリースペースで2013年2月4日から2月17日に開催された
退蔵院が、文化財の保存と若手芸術家の育成を目的に
無名の若手絵師が妙心寺の退蔵院のお抱え絵師となり
方丈(本堂)の襖絵64面を描くという進行中のプロジェクト

退蔵院方丈襖絵プロジェクトの詳細については下記をご覧ください
編集後記《退蔵院方丈襖絵プロジェクト》

絵師の選考
 絵師の選考に当たっては
「若く才能がある」、「京都にゆかりのある」、「やりきる度胸がある」、「宗教や文化を尊重できる」
という厳しい条件が課せられた
30名ほどが関心を示したが、応募者は8名、面接は3名に絞られ
2011年3月に京都造形芸術大学院を卒業した 村林由貴さんが選ばれた

絵師にえらばれた村林由貴さん
 村林由貴さんは1986年に兵庫県で生まれ
幼い時から絵を描き始め漫画家を目指しており、後にイラスト、絵画へと軸足を移した
今まで少女漫画を基調とした絵画や、鉛筆画やアクリル画などの分野を中心にさまざまな展覧会に出品するなど
精力的に活動してきた若手芸術家である
大学時代にはビビッドな感情があふれる極彩色の絵を多く描いた
特待生にもなり、コンペで賞金を稼いで大学院を修了した
 村林さんは、退蔵院がどんな場所なのか、禅も仏教も知らないまま応募した
日本画も水彩画も未経験だったが、自分の描いた絵が64面の襖絵として立ち上がるのを見たいと
そんな一念で応募したという
面接で「襖、64面ありますけど描けますか」という問いに、「描けます…というか、描きます」とこたえた


プレゼンテーションをする村林由貴さん
【京都・妙心寺退蔵院 村林由貴 襖絵展~美の創造とそれを支える職人たち~】

習作《龍と鳳凰》
 2011年末、習作として描ける最後の襖4面の前に立った時、龍と鳳凰を描こうと決心しました
素晴らしいものが多く描かれてきた龍と、細やかな羽の動きが難解そうな鳳凰
その2つのモチーフは、これまで描いてみたかったものの、恐れを感じて手を出せずにいました
けれど、今の私が描かない限り、今の私の龍と鳳凰は誰も見ることが出来ない
生み出すことさえもできない
自由に試すことを許されているこの場所で恐れる必要なんてどこにもないのではないか
そういう気持ちを奮い立たせました
舞い降りてきた龍と、天空を舞う鳳凰とが円を成して、ひとつの宇宙を描く、そのようなイメージで描きました
【説明パネルより】


習作《龍と鳳凰》
退蔵院本堂のすぐ裏手にある村林さんが住んでいる部屋の襖に描いた


習作《龍と鳳凰》 龍の頭部


美を創造する道具と素材~職人技の粋~
会場には、今回使用された材料や道具が展示されていた
紙は五十嵐製紙
絵具は京都のナカガワ胡粉絵具
筆・刷毛は京都の中里
硯は奈良の笹川文林堂、墨は奈良の墨運堂
表具は物部画仙堂
道具の夫々には、詳しい説明パネルが添えられており、興味深い内容を学ぶことが出来る


道具と素材の展示風景


紙は五十嵐製紙


紙は五十嵐製紙



絵具は京都のナカガワ胡粉絵具


筆・刷毛は京都の中里


筆・刷毛は京都の中里


硯は奈良の笹川文林堂、墨は奈良の墨運堂


表具は物部画仙堂 右側には引手が展示されている

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