謂れかたち
デューラーが描くドラゴン(ヨハネの黙示録)

デューラーはこれまでの伝統的な図像を自分で総合させてさらに強い表現を与える
単に宗教上の図像だけでなく、画家自身が信仰なり大衆の持つイマジネーションの部分を集めて
新たに創造してゆく過程が見える
このドラゴンの姿はデューラーの創作のように見えるが
西洋人が考えている『黙示録』の中の龍の典型的なものといっても良いと思われる
【安田喜憲 編 龍の文明史(八坂書房) 第3章 田中英道 「西洋のドラゴンと東洋の龍」より】


デューラー 《太陽の女と七頭ドラゴン》 1498
デューラー連作木版画の第9画
【出展:ドラゴン 反社会の怪獣 ウーヴェ・シュテッフェン著 村山雅人訳】


デューラー 《大天使ミカエルとドラゴンの戦い》 
1498
デューラー連作木版画の第10画
【出展:ドラゴン 反社会の怪獣 ウーヴェ・シュテッフェン著 村山雅人訳】

《ヨハネの黙示録》を読む
新約聖書の最後に掲載されている『ヨハネの黙示録』を要約する
太陽の女と七つの頭の竜<12章1−6節>
 女は太陽を身につけ、月の上に載り、12の星の冠を戴いていた。彼女は生みの苦しみでのたうち、大変な苦痛で叫んでいた。
 7つの頭と10の角を持ち、頭には7つの冠を載せている大きな赤いドラゴンが女の前に歩み寄る。このドラゴンは、女性が産んだ子供を食べてしまおうと待ち構えていた。
 生れた子供は男子で、将来人々を治める運命を持っており、この子供は天の神の御座に引き上げられる。女は神によって用意された荒野に逃げて、神の庇護を受けた。

 この英雄が誕生直後に直面する脅威は多くの神話において英雄が進む道である。(ヘラクレスの例など)。
 ドラゴンは神の敵対者であり、龍の赤い色は反乱や炎や血のしるしである。七頭はこのドラゴンがカオスを起こすドラゴンであることを示しており、十角はそれが巨大な力を持っていることのあかしである。

天使ミカエルとドラゴンの戦い<12章7−9節>
 さて天で戦いが起きた。天使ミカエルとその御使の天使たちが、ドラゴンに戦いを挑んだ。ドラゴンと仲間の天使たちは応戦したが破れ、もはや天に彼らの居場所はなくなった。
 そこで、この巨大なドラゴン(悪魔ともサタンともよばれ、全人類を惑わす者)は追放され、地に投げ落とされる。彼に従っていた天使たちもともに投げ落とされる。

 天には神だけでなく天使たちも居る。神は、天使のミカを選んで聖ミカエルと詠んだ。《エル》というのは神という意味である。神と対立する天使は堕落させられることによって、サタンのひとりとしてのドラゴンとして示される。サタンは、反キリスト、あるいは反神である。

女を追うドラゴン<12章13−17節>
 地に投げ落とされたドラゴンは女を追う。しかし、女には鷲の翼がはえ、それが女を神によって用意された避難場所へと運ぶ。(中略)
 ドラゴンは女を征服できないことを知ると口から水を吐き出し、女を溺れさせようとした。地は口を開けその水を飲みこんだ。するとドラゴンは激怒して、女の残した子供たちと戦うために立ち去った。ドラゴンは世界を再び水のカオスに押し流そうとする。

海と地から上がってくる獣<第13章1−18節>
 第13章は地上でのお話。少しわかりにくいが記してみる。
 ドラゴンは海の岸に近づく。すると一頭の獣が立ちあがってくる。この獣はそれぞれ神を冒涜するような名前の付いた七つの頭と冠で飾られた十の角をもっている。
 ドラゴンはこの獣に彼の力と王座と権威を委ねる。地上の人間たちはドラゴンを崇拝し、またこの獣を崇拝してこう言う「この獣に匹敵するようなものは誰がいよう。誰がそれと戦いを始められるような力を持っていよう」。(図中の寝ている人々は拝んでる姿をあらわしている) この獣は神を冒涜し、聖なる者たちと戦い、これを打ち負かす。

 それから第二の獣が地中から姿を現す。第二の獣は、第一の獣から全権を委任され、権力を行使する。(中略)
 それを崇拝しないものは殺される。地上から出てきたこの獣は全員に命じて右手あるいは額の上に刻印を押させる。この刻印をつけているものだけが、物を買い、売ることができる。

 この獣が持っている七つの頭は《崇拝に値するもの》、《世界の救世主》、《神の息子》、《主で神》のように神を冒涜するような威厳称号が付いたローマ皇帝を象徴している。冠で飾られた十の角は支配者の権力と威厳の印。

 この海から出てきた獣は、明らかにキリストの反対像、アンチキリストとして描かれている。地中から出てきた第二の獣は悪魔ドラゴンの似姿であり《偽預言者》と記される。ドラゴンと2頭の獣は統一体(三位一体)をあらわした悪の象徴である。

最後の審判<19章11−21節>
 天が開き軍勢を引連れた白馬に騎乗した騎士が現れると、獣は全世界の王たちとその軍勢を集めて騎士の軍団に戦いを挑む。獣とこの獣の前でしるしを行って、獣の刻印を受けた者、その像を拝む者とを惑わしたにせ預言者は捉えられ、生きながら硫黄の燃えている火の池に投げ込まれる。
 残りの者は騎士の口から出てきた鋭い剣で殺される。この騎士は最後の審判のために姿を現すキリストであると言われる。

ドラゴンと2頭の獣の最期<20章1−10節>
 この2頭の獣の裁きのあとで淵の鍵をもったひとりの天使が天から下りてきて、ドラゴンを捕まえて巨大な鎖につなぎ、千年間淵に鍵をかけて閉じ込める。
 千年が過ぎ、ドラゴンは暫くの間もう一度解き放たれる。ドラゴンは地の4つの端にいる諸民族を決戦のために招集し聖なる者の町を包囲する。

 その時、天から火が降ってきて、彼らを全滅させる。ドラゴンは火と硫黄の海の中に放り投げられた。海から上がってきた獣と陸から上がった偽予言者もともに、日夜苦しめられるのである。

デューラーの自画像
アルブレヒト・デューラー(
Albrecht Durer, 1471年5月21日 - 1528年4月6日
ドイツのルネサンス期の画家、版画家、数学者

2010年の霙交じりの雪の日にミュンヘンのの《アルテ・ピナコテーク》を訪れた
写真はその時撮影したものである

顔の右、金文字の銘文には
《アルブレヒト・デューラー ノオリクム(南ドイツ地方)の人 不朽の色彩で自らを描く 28歳》
と書いてある
左には制作年と画家のイニシャル《A》と《D》を組み合わせたモノグラム(図案文字)がある
強調された手は、右利きの画家の《創造の右手》

連作木版画を彫っているとき、デューラーはどんな顔をして、何を考えていたのであろう?


デューラー:自画像 1500年 67.1×48.8cm
2010年3月にミュンヘンの《アルテ・ピナコテーク》で撮影】

デューラーの有名な《四人の使徒》はこちらこちらにあります

120301/120302
龍の謂れとかたちのTOPへ