謂れとかたち
十二類合戦絵巻 上巻(模本)
東京国立博物館140周年特集陳列 博物館に初もうで~巳・蛇・ヘビ~

じゅうにるい かっせん えまき
狩野養長模
紙本着色
江戸時代・19世紀 (原本:室町時代・15世紀)
A-1749-1

十二支主催の歌合せで狸が判者になろうと申し出るが反対され
恨んだ狸が十二支以外の動物たちと合戦を挑むという物語
破れた狸は妻子と別れ、法然上人のもとで出家し、歌道に専念する
男性として擬人化される動物たちの中で、ヘビのみ女性の姿で描かれる
【展示の説明より】

南岳は写生を重視した京都画壇の重鎮・円山応挙の高弟
筆数を抑えた描写でありながら、それぞれの生き物の特徴を的確にとらえた南岳の高い技量を示す作品



十二類合戦絵巻 上巻の前半分


十二類合戦絵巻 上巻の後半分


十二類合戦絵巻 上巻の巻頭

十二類が歌合せを催そうとしたところ、狸を従えた鹿仙(歌仙)を名乗る鹿が判者を申し出た
歌合せの後、珍しい酒肴が持ち寄られ酒宴が開かれた


歌合せの後、珍しい酒肴が持ち寄られ酒宴が開かれた


酒宴に参加する十二支たち

エピソード
蛇(巳)が詠んだ歌
月巳(つきみ)れば憂(う)きもわすれて秋(あき)の夜(よ)を長(なが)しと思(おも)ふ人(ひと)やなからむ
(歌の意味:月を見ていると嫌なことも忘れてしまう、だから月の美しい秋の夜を長いと思う人はないだろう)
「見れば」にわざわざ「巳」の字をあてたり
「長い」という言葉を入れたりしている

この蛇は歌合のあとの宴会では
「お酒をお腹一杯飲んじゃった。早く着物を脱いで長くなって寝たいわ」
と言う
(十二支の中で女は巳のみ)


道具が並んでいる


歌合せと酒宴の場を仕切る辰(龍)


数日後、十二類は再び歌合を催そうとするが、鹿は判者を辞退する
そこで狸が判者の役を申し出るが、十二類に反対され、さんざんに打ちすえられた


数日後、十二類は再び歌合を催す


判者の役を申し出た狸を懲らしめる


打ちすえられる狸


狸を懲らしめよ


十二類合戦の物語

ある月夜に十二獣が月を題材に歌合わせを行う。そこへ狸を伴った鹿が現れ判者を申し出る。戌が出て来て追い返そうとするが、鹿は自分が「歌仙の一分」であることを述べ、龍がその場をまとめ、鹿が判者となり歌合わせが始まる。歌会は滞りなく進み、歓待の宴になる。十二支はそれぞれ珍しい肴を持参して鹿を接待する。その様子を狸はうらやましそうに見る。
 
数日後、十二支獣は再び歌合わせの会を企画し、鹿に判者を依頼するが、鹿はこのたびは辞退する。先日の様子をうらやましく思っていた狸が、自分ではどうかと申し出た所、場違いの不心得者と、十二支獣に罵倒され、打擲されて、命からがら逃げ帰る。

<ここから下巻>
狸はこの恨みをはらそうと、狼、狐、鳶などの仲間を集めて復讐戦をもくろむ。狸の動きを察知した十二支は先手を打ち、勝利したが、狸を捕らえることが出来ない。翌日の戦に備えて野宿して酒宴をはる。この様子を見張っていたトビが洞穴に隠れている狸に夜襲を勧める。狸は仲間を呼び戻して夜襲をかけて十二類を蹴散らす。
十二支は体勢を立て直し反撃する。狸軍はちりぢりとなり、狸は命からがら逃げ出す。一旦は鬼に化けて十二獣をかみ殺そうとするが犬に見破られる。
 
狸はついに恨みつらみを捨て、仏道の悟りを開くため、妻子に別れを告げ、法然上人門下の弟子となり、夜な夜な腹鼓をうって念仏を唱え、京の西山の庵に隠棲する。狸は和歌への執着だけは捨てきることが出来なかった。


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